今回ご紹介させていただくのは、ぎょっとするタイトルのこの本。

『安楽死で死なせてください』

でも、「安らかに楽な死」を迎えたいのは、私たち誰もが望んでいることですよね。

『おしん』や『渡鬼』の脚本家として知られる橋田寿賀子さん。
彼女は大正14年生まれの92歳、15歳から20歳まで戦争中で青春がなく、戦後は食べ物もなく、必死に働いてお金を稼ぎ、夫も30年前に看取り、子どももなく、親戚づきあいもない。
世界1周旅行は3回もしたし、もうやり残したことも未練も何もないので、「もうそろそろおさらばさせてもらえませんか?」と申し出る権利があってもいいのではないか?

もちろん、それは自殺とは一線を画するもので、医師や看護師、弁護士やワーカーなどのチームが総合的に判断し、後に誰も罪に問われないような安楽死の制度が欲しい。

人にはそれぞれ異なる死生観があり、その価値観にあった死に方の選択肢があってもよい。

要約すると、この本に書かれた橋田さんのご意見は以上のようなものです。

戦争を生き延び、戦後を生き抜き、70年近くも第一線で働いて財産も蓄え、夫や多くの友人・知人の死と間近に接しながらも、誰にも迷惑をかけず、今も健康で一人暮らしをされている90代の彼女が言うと、あまりに潔く、説得力がありすぎです。

ただ、橋田さんは、「自分には生きていてほしいと願う人もいない」などと言っておられますが、決してそんなことはないはず。
こんなに元気で、経済的な心配もない90代をご陽気に過ごしておられるなんて、その存在自体が多くの女性の希望の星です。

だからこそ、いつまでも希望の星で居続けて欲しいと願う私たちが、「そろそろおさらばえ。」と安楽死の希望を告げられた時に受け止める覚悟も必要なのですね。

そう考える私には、まだ自分事として安楽死を捉えられていないということもまた気付かせていただきました。

この本は、橋田さんが自分の人生を振り返りながら、どうしてこのような考えを持つようになったのか、重いテーマながら、時にユーモアも交えながら、ドラマのように分かりやすく書かれていてお薦めです。

きっと、悲壮感がないのは、まだまだ彼女がお元気でご活躍だからでしょう。

なお、誤解のないように、本にもきちんと書かれていますが、日本では現在安楽死は認められていません。